大きなゴキブリももう登場しない。
田んぼは刈り取られ脱穀を済ませた稲藁が吊るされている。
そして私はもうすぐ此処での生活を終える。
次の予定への具体的な行動を少しずつ始めている。
少し後ろ髪を引かれながら。
私はどこから来て、そしてどこへ行くのか?
なんどもなんども繰り返し降りてくる問い。
あの街の暮らしは快適で、忙しく、その問いと向き合う充分な時間を許してはくれない。
私は、それに抗いながら向き合ってた。たぶん必死に。
そうしながらも、あの街で生きて行くために蓋をしていたことがあったのだ。
そんなこと充分知っているつもりだったのにね。
開いてしまった蓋を私はもう閉めるつもりはない。
そうして私たちはいつまでも解けない問いを生きるのだろう。