
「今朝ね、もう最悪だったんだけど、”そんなこともあるよ”って、そう椿によびとめられてね、振り返ったら、あまりにも椿がきれいだったから、それでまぁいいかって。」

美しい椿と目が合って、何故だかもう何年も前の友人の言葉を思い出していた。

気がついたらそこは春の森で

樹々は待ちかねた様に春にを迎え夏へむかっている。

私は首に巻いたネックウォーマーのあまりの場違いさからそれを外し、桜のなかに入るんじゃないかというくらい眺めていた。

娘「この桜の木はちっちゃい子ですねー」
父「○○ちゃんとどっちか大きくなるのかなぁー」

桜はこのときとともに、二人にとっていつまでもお腹のそこにある愛おしい記憶になるんだろう。

夜、友人からのメール。心に突き刺さるテキスト。
「あの偉大な破壊の下では、運命はあったが堕落はなかった。無心ではあったが、充満していた」坂口安吾 堕落論より
そう、私たちはなんら失望なんてしていない。
種を蒔こう。
そうして、育てて、愛でて、収穫して、食べて、また蒔こう