
「暮らしててむかつくことはあるんだけれど、でも希望をさがしたくってね。だから、一緒にまちを歩こう。」
ある日、アキラさんと私はそんな言葉を見いだして、ある企みを始動し始めた、希望に向かって。
..

そうして、ある晴れた休日わたしたちはお揃いのTシャツをきて真っ白の風船を両手にまちを歩いた。

わたしたちを遠巻きに見る人も、写真を撮らせてと抱きついてきたり、すれ違う人たちのはんのうはそれぞれの反応だった。


おなかがへったので定食屋にも入った。古びてるけど、きれいでかわいらしいお店。
入ってしばらくして、お店とわたしたちはゆっくりと長く横に揺れ、ほかのお客さんもわたしたちも、少し動揺した。
お店のおかあさんは動揺している私に「あの地震で大丈夫だったお店だからね。」と優しいまなざしを送りながら云った。
この言い様のない安心感。
あの揺れとその後を乗り切ってここまきたこの街の人たちの懐の深さ。



その後わたしたちは美しい湖にたどり着いた。

そこにはそれぞれにそれぞれの休日を過ごす人々。
わたしたちの手元にあった白い風船は瞬く間に、それぞれの人たちへと渡たった。

手渡すたびに私はそれぞれと「会話」を交わした。

かれらは自分が暮らすまちのことを自慢し、そして目の前にある不安についても、真っ正面から話してくれた。

白い風船を持って。

ふと振り返ったら、アキラさんはすごく幸せそうに、白い風船を持った子供と話していた。

そしてあたりを見回すと、白い風船を持った子供たちでいっぱいになっていた。

アキラさんと私は、この堂々めぐりに挑む前に、何度か話をした。
話すたびに、お互いのことを理解して、話さなくなると、不安になって。

それでも一緒に歩きたかった。それぞれ別の場所から此処の景色を通過したかった。

今私の懐に付着して残っているのは、彼らとの言葉のやり取りよりもむしろ、あの景色。見ず知らずの人に白い風船を手渡したときの彼らの表情と、それをそれぞれが手にもって次の場所へ向かうあの景色。

そんな風に、ささやかだけどたいせつなことを共有できたなら、
本当にいらない物はいらなくなってなくなるんじゃないか。
いや、結論へと導くのはまだまだ早い。
此処まで来るのに時間がかかった。
私たちはもっと出会わなければならないし、もっと知りあわなければならない。
それを共有する魔法を編み出さなければならない。
。。。。。。。
そうして、風船を受け取った彼らは、今どんな景色をみているのだろう。
